Oisix ra daichi Creator's Blog(オイシックス・ラ・大地クリエイターズブログ)

オイシックス・ラ・大地株式会社のエンジニア・デザイナーが執筆している公式ブログです。

オイシックス流 生成AI活用のはじめ方

生成AIのブームが到来し、多くの企業がその可能性に注目し導入を検討しています。オイシックスもその一つです。 私たちは、お客様に「おいしく、楽しく、健康的な食生活」を送っていただくために、日々努力を重ねています。例えば、商品名一つにもこだわりを持ち、お客様に思いを伝える努力をしています。しかし、変化の激しい現代においては、スピードと柔軟性も求められます。そのため、従来のこだわりを大切にしながらも、時代の変化に対応できるよう、技術を活用した業務改革が求められていました。今回のブログでは、その取り組みの1つをご紹介したいと思います。

ボトムアップ型プロジェクトの始動

では、生成AIをどのように活用すれば、業務改革を開始できるのでしょうか? その答えとして、私たちは「生成AIボランティアプロジェクト」を立ち上げました。役員メンバーの「最先端技術を駆使して業務の質と速度を改革するためには、それに先駆けてまずはトライアルなプロジェクトを介して、従業員が自由にトライし学べる機会を提供することが最重要である」という考えに基づき、コーポレート部門、消費者向け事業部門、ビジネス向け事業部門、企画製造部門、ロジスティクス部門、システム部門から、総勢50名以上の社員がボランティアとして参加しました。

最初の関門:生成AIは魔法の杖ではない

活動に先駆けて事前アンケートを実施した結果、参加者の生成AIに対する理解度に大きなばらつきがあることが判明しました。例えば、「生成AIを使えば、どんな問題も自動的に解決できる」といった誤解や、「専門知識がなくても、すぐに使いこなせる」といった期待を持つ参加者もいました。生成AIを「万能な解決策」と誤解し、具体的な課題解決に集中できないことを避けるため、早い段階で正しい認識を共有する必要がありました。

ボランティア活動の最大の課題は“時間”

ボランティア活動に参加する社員は、日々の業務に加えて生成AIの学習に取り組む必要があり、限られた時間の中で効率的に学習を進めることが重要でした。そこで、参加者が主体的に学び、ビジネス貢献への意識を高めながら、効率よく生成AIを習得するために、以下の3点に重点を置いた支援を行いました。

  • 参考図書の提供:無料ビデオ、特に公官庁や教育機関から公開されているビデオなどを教材とした参考図書群を用意し、生成AIの基礎知識の習得をサポートしました。
  • 専門家からのインプット - AWS ジャパン生成 AI 実用化推進プログラムの利用*1:プロジェクトに賛同してくれたAWS社による「生成AI勉強会 生成AIの基本のキ」を開催し、専門家から直接学ぶ機会を提供しました。
  • 手を動かす場の提供 - GenUの活用*2:GenUを活用したボランティア向け専用ツールを提供し、 AWS社提供の自宅で取り組める生成AIワークショップ「Anthropic Claude でいろいろな問題を解いてみよう」などの教材や、生成AIを活用した業務改善企画書の作成など、実際に手を動かす機会を提供しました。

参加者の高い関心と積極的な姿勢

AWS社による生成AI勉強会「生成AIの基本のキ」は1.5時間の長時間開催でしたが、90%の参加者が出席しました。勉強会後には、「これからへの期待しかないです」「自身の業務の効率化、質の向上が期待できると感じています」「利用できることをとても楽しみにしてます!」といった声が多数寄せられました。その後、検証用ツールには82%の参加者が申請するなど、ボランティア参加者の高い関心と積極的な姿勢が見られました。

第二の関門:生成AIへの期待と現実のギャップ

多くの期待を集めていた生成AIですが、ツール利用開始後にギャップが生まれ始めました。 勉強会「生成AI勉強会 基本のキ」終了後のアンケートでは、91.3%が「生成AIを使用することで生産性を高めるイメージが持てた」と高い期待値を示しました。

利用開始前
一方、ツール利用開始後には「生成AIを使用することで生産的になった」と回答した割合は53.9%に低下しました。参加者からは「ツールが使いこなせない」「自分の頭で思い描く以上の結果は得られなかった」「想像より時間がかかる」といった戸惑いの声も聞かれるようになりました。
利用開始後

コミュニティの力を借りる

生成AI利用後のギャップ解消のため、Slackチャンネルを活用したコミュニティに力を注ぎ、参加者同士が課題を共有し、解決できる環境を構築しました。活発な情報交換が行われ、プロンプトの書き方や成功事例の共有、機能追加要望などが活発に議論されるようになりました。以下はその議題の一部です:

  • AWSのプロンプトスペシャリストへの質問
  • AWSワークショップの感想共有
  • プロンプトの書き方に関する質問
  • 成功事例やそのプロンプトの共有
  • AWS Bedrockの機能追加要望
  • 削減コストの試算と共有
  • 生成AI活用企画書の共有と仲間募集
  • 仲間の課題に関連するニュースや参考文献の共有

特に、AWS社からの支援は好評で、多くの参加者が積極的に質問を投稿していました。AWS社からの丁寧な回答やアドバイスは、参加者にとって大きな支えとなっていました。

試行錯誤から生まれた成長と成果

はじめは上手くできなくても、他者のプロンプトやアプローチを真似するうちに自身も会得することはよくあります。このプロジェクトでも、実践を通して生成AIの使い方理解した参加者がお手本となり、フォロワーがつくことで、コミュニティはさらに活発化していきました。活動開始から1ヶ月後には、生成AIを活用した生成AI活用企画書が提出され、当初はボランティアに参加していなかった組織のリーダーもコミュニティに参加をするようになりました。

企画書例

  • 生成AIを活用した社内問い合わせ対応の効率化
  • 販売ページ校正業務の効率化
  • 生成AIを活用した運営業務のサポートと効率化
  • 法人営業支援企画書
  • FAQ拡充時の生成AI活用

生成AIボランティア活動から得られた3つのこと

生成AIボランティア活動を通して3つの重要な成果が得られたと思います。

1. 生成AIとの付き合い方”の理解

振り返ると、生成AI活用の最初のハードルは「生成AIとの付き合い方に慣れること」でした。参加者の多くは、座学を通じて「生成AIは魔法の杖ではない」ことを理解していましたが、いざ実践となると多くのことを期待したり、逆に過小評価する傾向がありました。生成AIボランティア活動では、異なるバックグランドの参加者が相互に情報を共有し、時には生成AIに実行させるタスクの切り方に指摘を受けたり、時には成功事例を真似することで実践的な知識と経験を得る機会を得ました。

2. 具体的な改善アイデアの創出

当初は漠然とした期待を抱いていた参加者も、コミュニティでの議論や情報共有を通して、ボランティア活動を通して、「何を達成したいのか」を明確にすることの重要性を認識し、具体的な企画書を作成するまでに至りました。

3. 見えてきたリーダー像

”生成AI活用における活躍人材”とはどのような人材を指すのでしょうか?生成AI技術は毎日進化しています。ChatGPTが一世を風靡したのも束の間、今はClaudeが注目を集めるなど、AI技術の進化は目覚ましく、生成AIエンジニアでも追随が難しいほどです。このような状況下で、技術変化に流されることなく、業務効率化や新しい価値創造といった真の価値に貢献できる人材こそが、真に活躍できる人材と言えると思います。ツールはあくまで手段であり、目的を達成することが求められているのです。今回のボランティア活動を通じて、そのようなリーダー像が見えてきました。

これがオイシックス流

一般的に、IT系組織で新技術を採用する際は、野心的なビジネスリーダーとフルスタックエンジニアが協力し、短期間でプロトタイプを作成することが多いでしょう。しかし、今回は全社から多様なバックグラウンドを持つ社員を募り、それぞれが生成AIに挑戦するという、より大規模で野心的な試みでした。所属する組織は異なっても、一同が協力し合える環境が、まさにオイシックスらしさと言えると思います。

Oisixでは、非連続な成長に挑む人材を求めています!

今回は「オイシックス流 生成AI活用」の取り組みの一部をご紹介しました。私たちの取り組みへの姿勢や会社の雰囲気が少しでもお伝えできていれば幸いです。 Oisixでは、以下のような方を求めています。

  • 技術に興味を持ち、積極的に活用に挑戦するのが好きな方
  • チームワークを重視し、周囲と協力して課題解決に取り組める方
  • 変化を恐れず、常に新しい技術や知識を学び続ける意欲のある方

Oisixで、あなたのスキルと情熱を活かしてみませんか?

*1:AWS ジャパン生成 AI 実用化推進プログラムaws.amazon.com

*2:Generative AI Use Cases JP (略称:GenU)github.com

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